ぷりん's note

自分用メモ、虚偽の内容があれば教えてください。

UKLO2021 R1-2 カビル語

The UK Linguistics Olympiad 2021 Round1 (Breakthrough, Foundation)

Problem 2. Kabyle

ジャンル:統語

難易度:☆2

問題・解答は

www.uklo.org

より引用。

 

f:id:adenosinetrip:20220219112636j:plain

UKLO2021 R1-2 Kabyle

 

 

形態素解析

設問も含めすべて直説法・能動態・過去形で、ムードやヴォイス、時制やアスペクトを問われているわけではなさそう。

否定はすぐにわかる(Ur … ara)。一見するだけでは名詞の形態素が分かりにくいので、動詞を先に確定させる。こういう時は同じ動詞ごとに上から並べる。

1 Ufge-nt. They flew.
3 T-ufeg. She flew.
4 Ur ufge-gh ara. I did not fly.
6 Ur y-ufeg ara. He did not fly.
2 Uzzle-gh. I ran.
5 Y-uzzel weqcic. A boy ran.
7 Ur muqle-nt ara. They did not observe.
8 Te-muqel teqcict. A girl observed.

かなり分かりやすくなった。動詞と否定標識を除いた部分が主語標識であるのは間違いない(以上の文はそれら3要素で構成されるため)。

V-gh I
V-nt they
y-V he
t-V she
y-V weqcic a boy
te-V teqcict a girl

(なおこの表は誤り、後述する)

主語標識が動詞の前についた場合は動詞の語尾が"-eC"で終わり、主語標識が動詞の後ろについた場合は動詞の語尾が"-Ce"で終わる(Cは任意の子音)。さらに前者は、主語が"she", "he", "a boy", "a girl"のときであり、後者は主語が"I", "They"の時である。

ここまで解析できれば十分で、(1)(2)とも解ける。

 

本当に解けるのか?

しかしながら解答に不可解な点がある。Q2.1の11番、"A girl ran."を上の解析の通り訳すと、"Teuzzel teqcict."となるはずだが、解答は、"Tuzzel teqcict."となっている。

また、Q2.1の11番、"He did not observed."を上の解析の通り訳すと、"Ur ymuqel ara."となるはずだが、解答は、"Ur yemuqel ara."となっている。

解答の下のCommentaryには、"she"の主語標識は"te"、"he"の主語標識は"ye"となっていて、動詞や主語標識のeと母音が被るときにeが除去されるとある。

V-gh I
V-nt they
ye-V he
te-V she
ye-V weqcic a boy
te-V teqcict a girl

(正しい主語標識はこの通り)

しかしながら、この法則は与えられた8個の訳文からは分からないのではないか?確かに、三人称単数では性別で主語標識が決定すると考えたほうが妥当だが、問題文からはそう確定する根拠が足りない(三人称単数のそれぞれが主語となっている文が各1文しか与えられていないため)。

 

総評

何か勘違いをしているとかでなければ、eの脱落は見抜けないはず。それを除けば平易な問題。

なおJOL2021-1にカビル語の同じような問題がある。UKLO2021 Round1は2021年2月開催なのに対してJOL2021は2020年12月開催なので、UKLOがJOLの問題を見て後出しした可能性が無くはない。